ビートルズのざっくり解説を書いた次は、当然ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)(以下ストーンズ)以外ありませんよね。どうせ全部書くと決めているし、60年代から順にさかのぼりつつ紹介していこうと思います。ある程度溜まったら、それらをまとめてムーブメントやジャンルの派生の流れなんかも書けたら良いなぁ…、と考えています。ぜひよしなに。
ということで、今回は「ローリング・ストーンズ」について、ざっくりと解説していこうと思います。1962年に結成し、現在も活動。英盤米盤両方合わせると26枚ものアルバムをリリースと、さすがに途方もない歴史を誇っているため、ストーンズは60・70・80・90年以降、の4つに区切って書いていこうと思います。でないと終わらない…笑
また、今回以降、アルバムは『』でくくり、楽曲は""でくくります。アルバムはカナ表記等ありますが、楽曲は英表記のみに留めさせていただきます。
ローリング・ストーンズの軌跡
まずはこちらのプレイリストをどうぞ。ぜひ流しながら読んでいただければ。好みの楽曲で構成しつつ、有名な曲は外してないので初心者でも確実に楽しめるようになっております。
基本的にUK盤のものにしていますが、US盤からの楽曲もいくつか入れてます。"(I Can't Get No)Satisfaction"など、ストーンズを代表する名曲がアルバムに入ってない、なんてこともありますからね~。
ローリング・ストーンズとは
左から:ブライアン・ジョーンズ、チャーリー・ワッツ、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ビル・ワイマン
ローリング・ストーンズは、1962年4月にイギリス・ロンドンで結成されました。
ビートルズと違い、ストーンズは多少の"主要メンバー変更"があり、ちょっとだけ複雑です。本記事では、期間として短かったメンバーについては省略させていただくとして、まずは現在のメンバーを紹介させていただきます。、
- ミック・ジャガー(Mick Jagger) / Vo
- キース・リチャーズ(Keith Richards) / Gt, Vo
- チャーリー・ワッツ(Charlie Watts ) / Dr
- ロニー・ウッド(Ronnie Wood) / Gt, Vo
ライブではツアー・メンバーが同行し、足りない楽器を補ってもらうという感じですね。楽器はかなり省略していますが、これはあくまでも主な担当パートを表記させていただいてます。
現在は脱退しているため、ここからは外れますが、ローリング・ストーンズを語る上で外せないメンバーは以下の4人です。
- ブライアン・ジョーンズ(Brian Jones) / Gt, Key, Vo (1962-1969)
- イアン・スチュワート(Ian Stewart)Key, Piano (1962-1963(準メンバーとして:1964-1985))
- ミック・テイラー(Mick Taylor) / Gt (1969-1974, 2012-2014)
- ビル・ワイマン(Bill Wyman) / Ba, Vo (1962-1993)
特にブライアン・ジョーンズとイアン・スチュワートは創設メンバーでもあります。イアンは初期にレーベルの意向(見た目がストーンズのイメージに合わない)で脱退させられることになりましたが、心臓発作で亡くなるまで準メンバーという名の、実質的なメンバーの一人でもありました。
1960年代のストーンズは
- ミック・ジャガー(Mick Jagger) / Vo
- キース・リチャーズ(Keith Richards) / Gt, Vo
- チャーリー・ワッツ(Charlie Watts ) / Dr
- ブライアン・ジョーンズ(Brian Jones) / Gt, Key, Vo
- イアン・スチュワート(Ian Stewart)Key, Piano
- ビル・ワイマン(Bill Wyman) / Ba, Vo
この6人が基本となります。60年代最後のアルバムに、2曲だけミック・テイラーが加入しているような状態ですね。
ストーンズの音楽的歴史は、ギターメンバーの変動によって変わっていった節があるので、1960年代は「ストーンズ×ブライアン・ジョーンズ」という聴き方をすると面白いのではないかな、と思います(ブライアンがどういうギタリスト(マルチ・プレイヤー)だったのかはアルバム解説にて紹介していくので、ひとまず先へ進みましょう)。
バンド名について
結成当初は特に名前を決めていなかったのですが、ある日ブライアンが「ジャズ・ニュース」紙から電話インタビューを受けたときにバンド名を聞かれたため、とっさに床にあったマディ・ウォーターズ(Muddy Waters)のレコードを見て、そこに収録されていた"Rollin' Stone"という楽曲をバンド名として答えたことで決まりました。正式に「ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)」となったのはまた後日のこと。
ローリング・ストーンズが受けた音楽的影響
ストーンズは「イギリスの白人たちに『本物の』R&Bを聴かせる」ことを目的として結成されました。…これはあくまでもブライアンの意見であり、ミックやキースはブルースやロックンロールのファンでもあったため、色々なジャンルのカバーをやっていたのですが、総じてアメリカの黒人がやっていた音楽をイギリスに広めよう!というのが彼らの目標でした。
それもあって、3rdアルバムまではカバー曲が大半を占めていたんですね。
それ以降はミックとキース主導の元、全曲オリジナル楽曲へと変わっていき、それが当たり前になっていくのですが、ストーンズの肝となる部分は今も変わらず「ルーツ・ミュージック」にあります。
そこがビートルズと大きく異なる部分ですよね。音楽を発展させたビートルズと、音楽の基礎を探求したストーンズ。ビジュアルだったり階級だったり、色々と異なる存在だった2バンドでしたが、音楽的に見てもそもそもの根本が違うため、1960年代を代表する2大UKバンドといえど、実は比べるものでもありません。
受けた音楽的影響として、シカゴ・ブルースやロックンロール、R&Bが挙げられます。アーティストとしては
ジャンルとしては上述したものから影響を受けたのですが、アーティスト個人でいくと
- チャック・ベリー(Chuck Berry)(ロックンロール)
- マディ・ウォーターズ(Muddy Waters)(シカゴ・ブルース)
- ハウリン・ウルフ(Howlin’ Wolf Little)(シカゴ・ブルース)
- ボ・ディドリー(Bo Diddley)(ロックンロール)
- B.B キング(B.B. King)(R&B/ソウル)
この辺りからの影響が大きかったようですね。
作曲クレジットについて
作曲に関しては、基本的に「ジャガー-リチャーズ(Jaggar-Richards)」表記で統一されています。初期〜70年代あたりまでは、ミックが作詞と歌メロ、キースが作曲を担当していたようですが、それ以降は顔を合わせたときにアイデアをぶつけ合って完成させているのだとか。
実際のところ、多くの場合他のメンバーもいくらか作曲に関与しているはずなのですが、他のメンバーが関与していても「ジャガー-リチャーズ」でクレジットしてしまっていたため、その実態は闇の中謎のまま…。今だったら信じられないような雑さですね。
ちなみに、〜1965年まで「ナンカー・フェルジ(Nanker Phelge)」という名前がクレジットされた楽曲がありますが、これはジャガーリチャーズと他のメンバーを加えた共作のときの変名です。ナンカーは「あかんべえ」という意味で、フェルジはメンバー共通の友人ジミー・フェルジからきているそうです。
一瞬「ストーンズのロゴ(唇と舌)」の由来か?と思ったのですが、これは特に関係なかったようです。これが合致してたらニヤつけるんだけどな~。
作曲のきっかけ
ローリング・ストーンズは元々ブルースのカバー・バンドとしてデビューしました。全曲オリジナル楽曲になったのも4thアルバムからですし、結成当初は誰もオリジナル曲を作る気がなかったようです。
しかし、1963年のある日、マネージャーがビートルズのジョン・レノン(John Lennon)とポール・マッカートニー(Paul McCartney)に楽曲提供を依頼し、ストーンズのメンバーの目の前で弾いて見せたのです。そのあまりにも見事な作曲プロセスに感銘を受け、ストーンズもオリジナル曲を作るようになっていくのです。
ビートルズのクレジットといえば「レノン・マッカートニー」が有名ですが、ストーンズもそれにあやかって「ジャガー-リチャーズ」と表記するようになったんですね。
1960年代のローリング・ストーンズの軌跡
- 1962年4月:ミック、キース、ブライアン、チャーリーとその他メンバーによってローリング・ストーンズが結成された
- 1962年12月:ビル・ワイマン加入
- 1963年1月:チャーリー・ワッツ加入。1960年代のメンバーが揃う
- 1963年:ストーンズのマネージャーにしてプロデューサーだったアンドリュー・オールダムがバンド名を"The Rollin' Stones"から"The Rolling Stones"に変更
- 1964年4月16日:1stアルバム『ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)』リリース
- 1965年1月15日:2ndアルバム『ローリング・ストーンズ No.2(The Rolling Stones No. 2)』リリース
- 1965年7月30日:3rdアルバム『アウト・オブ・アワ・ヘッズ(Out of Our Heads)』リリース
- 1965年8月20日:初のナンバーワンとなったシングル"(I Can't Get No) Satisfaction"リリース
- 1966年4月15日:4thアルバム『アフターマス(Aftermath)』リリース。初の全曲オリジナル・アルバム。ブライアンがリーダーだったが、全曲作詞作曲したミックとキースに主導権を握られ、バンドのパワーバランスが不安定になる
- 1967年1月20日:5thアルバム『ビトウィーン・ザ・バトンズ(Between the Buttons)』リリース
- 1967年:ドラッグにハマる。訴訟されるわ逮捕されるわ、とにかく大変な時期がしばらく続く
- 1967年3月:キースがブライアンの彼女を寝取る。既に良くない関係だったが、これを機にさらに悪化する
- 1967年12月8日:6thアルバム『サタニック・マジェスティ(Their Satanic Majesties Request)』リリース。バンド初の自己プロデュース
- 1968年12月6日:7thアルバム『ベガーズ・バンケット(Beggars Banquet)』リリース。ストーンズ黄金期の始まり。ジミー・ミラーによるプロデュース
- 1968年:映像作品「ロックンロール・サーカス(The Rolling Stones Rock and Roll Circus)』が制作される。嫉妬や権利問題などにより、その後30年封印された
- 1969年7月3日:ブライアン・ジョーンズが自宅プールにて溺死
- 1969年7月5日:ミック・テイラー加入後初のライブはブライアン・ジョーンズ追悼ライブとなる
- 1969年12月5日:8thアルバム『レット・イット・ブリード(Let It Bleed)』リリース
ローリング・ストーンズのアルバムざっくり解説
1st~3rdまで
1st. ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)
1964年4月16日リリース。記念すべき1stアルバム。ここから3枚目まではカバー中心のアルバムとなっていて、なかなか早いスパンで新譜が届けられます。
1960年代といえば、ロックンロールがロックに変化していった年代です。黒人のジャズ、ブルース、R&Bなどが白人によってカバーされ、カントリーやロカビリーなどと呼ばれるようになっていったのですが、その橋渡しになったのがストーンズというバンドでした。
4枚目以降ほぼ完全オリジナル楽曲でアルバムをリリースしていくことになるのですが、そこで彼らが有名になっていくのもやはり「ルーツ・ミュージック」だったわけです。
ビートルズが2ndアルバムを1963年11月にリリースして1位の座をキープしていたのですが、ストーンズの今作が出たことで明け渡すことになりました。ロックバンドが少ないのもあったかもしれませんが、この頃からストーンズ人気はすごかったようですね。
2nd. ローリング・ストーンズ No.2(The Rolling Stones No. 2)
1965年1月15日リリース。2ndアルバム『ローリング・ストーンズ No.2(The Rolling Stones No. 2)』。カバー・アルバムとして聴くなら個人的には2ndの方が好きです。オリジナル曲も全部「おっ」と思うようなものですし、この頃から"片鱗"のようなものが見えてきているのではないでしょうか。
とはいえ、まだまだ普通の"60年代のバンドの一つ"という印象が抜けないので、コアなブルースのファンでもない限りはスルーして良いのかな、と思います。
プレイリスト収録曲:
- Off the Hook
3rd. アウト・オブ・アワ・ヘッズ(Out of Our Heads)
1965年7月30日リリース。3rdアルバム『アウト・オブ・アワ・ヘッズ(Out of Our Heads)』。SpotifyにリンクがなかったのでUS盤を貼ってます。というか、3rdに関してはこっちの方がおすすめなんですよね。名曲"(I Can't Get No) Satisfaction"や"The Last Time"も入ってますし。US盤を聴きましょう。
12曲中6曲がオリジナルと、段々ストーンズ独自の楽曲が生まれるようになってきました。カバー曲もドン・コヴェイ(Don Covay)にマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)、サム・クック(Sam Cooke)と、R&Bを中心としていて、アルバム通して統一感のあるものになっています。UK盤でも4曲はありますし、作曲においてのパワーバランスはこの辺りから変動していってる感じはしますね。
ブライアン・ジョーンズがリーダーとして始まったバンドですが、今作は彼も納得の出来だったのではないでしょうか。ストーンズ史上最もR&B色が強いですし。とはいえ、これ以降はミックとキースによるオリジナル楽曲がストーンズの中心となっていくのですが。
作曲ができなかったブライアンはこれ以降、ギターだけでなくシタール、アコーディオン、鉄琴、琴、テルミン、キーボード、サックス、ハープなど様々な楽器に手を出し、アレンジャー、マルチプレイヤーとしての才能が爆発します。その代わり、リーダーとしての居場所が取って代わられたこと(もちろん他にも色々ある)によるストレスでドラッグに溺れてしまいます。
そういえば最近、こんなツイートを見たのを思い出しました。
お腹抱えて笑ったwwwww
※実際は英ポーツマスのオーケストラが担当楽器を替えっこして弾いてみたらどうなるか、という実験をした結果らしい笑える https://t.co/wX16fv4qPS
— ロックダウン🍁支店長★3000 (@Larc_UK_VVVVVV) November 10, 2020
一つの楽器が弾けるなら、プロなら割と他の楽器もできるものだろう(だからマルチプレイヤーって正直スゴくないのでは?)、という概念は崩れるのではないでしょうか。
その頃には世の中がヒッピー、サイケデリック・ムーブメントだったのもあり、ドラッグが身近過ぎたのもあるでしょうね。とにかく、ここからメンバー間の関係性(作曲格差)は大きく変わったと言えます。
ただ、それらの問題があったとしても、ジャガー-リチャーズ作詞作曲のオリジナル楽曲にブライアンの編曲という構成は、60年代のストーンズにとってなくてはならないものでしょう。
プレイリスト収録曲:
- The Last Time
- (I Can't Get No) Satisfaction
4th. アフターマス(Aftermath)
1965年4月15日リリース。4thアルバム「アフターマス(Aftermath)」。これまでと明らかに何かが違います。オリジナル楽曲というのもありますが、1曲目のビルのベースラインからしても独創性と勢いを感じます。これまでもそうでしたが、オリジナル曲になってグッとセクシーに妖しさに磨きがかかりましたね。ここからさらに凄くなっていきます。それこそストーンズの魅力ですし。
ハードロックはブルースが起源とされていますが、今作はその走りのような印象も受けます。"Under My Thumb"や"Going Home"などは70年代のバンドに影響を与えたように聴こえますし、かと思えば"I Am Waiting"のように、フォーキーで65年にふさわしいような楽曲もしっかり収録されています。
全盛期のストーンズと比べるとどうしても"佳作"感のある本作ですが、聴けば聴くほど好きになるマジックを感じる、魅力的なアルバムでもあります。
ちなみにアルバム名は最初『Could You Walk on the Water?』だったそうですが、レコード会社がアメリカのクリスチャンから批判されることを懸念してNGになったそうです。
プレイリスト収録曲:
- Stupid Girl
- Under My Thumb
- Out of Time
5th ビトウィーン・ザ・バトンズ(Between the Buttons)
1967年1月20日リリース。5thアルバム『ビトウィーン・ザ・バトンズ(Between the Buttons)』。時代が時代というのもあって、サイケ臭が少し立ち込めるアルバムになっています。こうして聴くと、当時のビートルズとボブ・ディランがどれだけ大きな影響力があったかがうかがい知れます。
これまでストーンズといえば「R&Bとロックンロールのバンド」という認識をされてきたのですが、オリジナル楽曲で構成された『Aftermath』から今作で多様なジャンルに挑戦してきました。カバー曲が中心だった3rdアルバムから比べると、明るい場所から急に暗闇へ飛び込むような心地だったのではないでしょうか。
結果論として、「アフターマス」~「サタニック・マジェスティ」まではどこか不安定さの残る雰囲気が漂っていました。それ以降、ストーンズの黄金期が始まるわけですが。
前作からブライアンがギター以外の楽器を使うようになったのですが、今作からは他の楽器がメインとも言えるくらい、縦横無尽に楽器を変え品を変えしています。彼のおかげでサイケデリックな雰囲気が今作では如実になり、キースのギターとの絡み方もこれまでとは異なって聴こえます。
キースはキースでギターが実質的に一人になってしまったのもあってか、目立つフレーズが増えているような気がしますね。というか、今作はリズム隊の技術向上が目覚ましいのでは。色々と過渡期を感じるアルバムです。
ちなみにこの頃ザ・キンクス(The Kinks)からの影響も大きかったようで、確かにバロック・ポップ的雰囲気もありつつな音像になっているように聴こえます。
プレイリスト収録曲:
- Yesterday's Papers
- She Smiled Sweetly
- Please Go Home
6th. サタニック・マジェスティ(Their Satanic Majesties Request)
1967年12月8日リリース。6thアルバム「サタニック・マジェスティ(Their Satanic Majesties Request)」。ストーンズとしては評価低め認定されることもあるアルバムですが、僕個人としてはめちゃくちゃ好きなアルバムです。
当時は誰も彼もが「ビートルズの『サージェント・ペパーズ』のようなアルバムを!」と叫んでいた頃で、ストーンズもついにサイケアルバムを作ってしまったのです。出来に関して、自分はサイケデリック・ロックが好きですし、ストーンズにそこまでの愛着もありませんので普通に「良いアルバムじゃん」と思っていました。愛着度は記事を書く前と今では大きく変わりましたが、良いアルバムだというのは今も変わりません。
後世のアーティストにも確実に影響を与えていて、例えば"In Another Land"なんてモロMGMTですし、90年代以降のUKロック・バンドは皆この手の音楽大好きでしょって感じですし。時が経過して再評価されているのも納得です。
さて、「本物のR&Bバンド」を志向していたブライアンでしたが、今作ではサイケデリックな音像作りに非常に貢献しています。R&Bへの渇望や才能は確かにありましたが、ストーンズという舞台は、もうそれを表現できる場ではなくなってしまったのでしょう。とはいえ、サマー・オブ・ラブなヒッピーでドラッギーな時代でもあったので、こういう音は世界的にトレンドでもあったため、ブライアンも普通に好きだったんだと思います。でないとここまで再評価はされないでしょう。
プレイリスト収録曲:
- Citadel
- In Another Land
- She's a Rainbow
- 2000 Light Years from Home
7th. ベガーズ・バンケット(Beggars Banquet)
1968年12月6日リリース。7thアルバム『ベガーズ・バンケット(Beggars Banquet)』。ここから『メイン・ストリートのならず者(Exile on Main St.)』までが一般的にストーンズの黄金期とされている時期です。
今作の前にリリースされたシングルが"Jumpin' Jack Flash"。"(I Can't Get No) Satisfaction"に匹敵するストーンズの代表曲の一つです。
当時の音楽業界は、先行リリースされたシングル曲はアルバム未収録にするのが常識だったらしいので、上記に挙げた2曲はどちらもアルバムに入らなかったんですね。名曲ではありますが、アルバムのテイストからはあえて外れたように作曲されたようですし、プロモーションの一貫代わりに景気の良いのを一発、という感覚だったのでしょうか。なんにせよ、良い曲です。
ストーンズを初めて聴くという方は、まずこのアルバムから聴くのが間違いないでしょう。ストーンズがどういう音楽性を志向しているバンドなのか、どんな性格をしているのか、時代感など、ただ耳を傾けるだけで全て入ってきます。
前作は完全にサイケデリック・ムーブメントに乗っかって制作されたアルバムだったため、商業的には比較的成功したとはいえ、元々のファンからは到底受け入れがたいものでした。しかし今作は、ルーツ・ミュージック、ブルースが念頭に置かれ作曲が行われました。その結果、自他ともに認めるレベルのストーンズ最高傑作のひとつが誕生することになったのです。
プロデューサーはジミー・ミラー。当時は特に有名なプロデューサーなどはいないかと思うのですが、その中で自らのバンドにマッチした人を選ぶあたり、ミックは本当に冴えた人物だなぁ、と感じます。
今作はアコースティック・ギターがフィーチャーされていて、ドラムスも使用されない楽曲が3曲もあるなど、よりブルースに接近した音楽性になっています。また、ブライアンはドラッグにより深刻にキツい状況になっていたようで、前作よりも貢献度は低くなっています。この辺りから、ストーンズはブライアンを脱退させて、新たなメンバーを加入させようと考えるようになりました。
結果論ではありますが、ここにたどり着くまでにオリジナル楽曲のみの後世のアルバムを3枚出していたからこそ、ここまで正直にブルース、ルーツ・ミュージックと向き合えたアルバムが完成したのだと思います。
完成度もこれまでのアルバムと比べて段違いですし、どれを聴いても「おっ」となるものばかり。泥臭く、軽やかでノリノリになれる。こんなとんでもない名盤が68年にリリースされたという事実に圧倒されますね…。
ちなみに今作はUSのバンド、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)からの影響が少なくないようで、だから音的にミニマルな印象を受けるのかな、などと。
プレイリスト収録曲:
- Sympathy for the Devil
- No Expectations
- Street Fighting Man
- Stray Cat Blues
- Salt of the Earth
8th. レット・イット・ブリード(Let It Bleed)
1969年12月5日リリース。ストーンズによる60年代最後のアルバム『レット・イット・ブリード(Let It Bleed)』。制作中にブライアンが脱退し、新たにミック・テイラーが加入したこともあって、今作は過去最多のストーンズ・メンバーがクレジットされています。
が、ブライアンは6曲目のコンガと7曲目のハープのみ、ミックも3、4曲目のギターを担当したくらいなので、実質的にはその2人を除く4人で制作されたアルバムと考えてしまって良さそうです。
音楽性は前作『ベガーズ・バンケット』の延長線上にありながら、今作はライ・クーダーやボビー・キーズ、さらにはボブ・ディランの楽曲"Like a Rolling Stone"でオルガンを弾いたアル・クーパーなど、外部アーティストを積極的に起用しています。
前作はブルースがトップにあったような印象ですが、今作はジャズ、ロックンロール、R&Bにゴスペルと、ルーツ・ミュージックを中心に据えたようなアルバムとなっていて、その辺りが好みを分ける部分なのかな、と考えています。雰囲気的には同じなので。
『ビトウィーン・ザ・バトンズ』以降、ストーンズはザ・キンクス(The Kinks)からも影響を受けていたようですが、そのバロック・ポップな面がここにきて上手く作用したのでしょうか。ボブ・ディランを聴いていたのは間違いないですし、カナダで結成・アメリカで活動したザ・バンド(The Band)などの影響も少なくなさそうですね。
また、今作のリリース前に大きな事件がありまして、それがブライアン・ジョーンズの死というものでした。脱退から1ヶ月もしない内に自宅のプールで溺死してしまったのです。ブライアンは1969年7月3日に亡くなったのですが、その2日後にストーンズ主宰のハイドパーク・フリーコンサートというライブが予定されていました。元々はミック・テイラーお披露目を主目的としたライブだったのですが、こちらは急遽「ブライアン追悼ライブ」となりました。
プレイリスト収録曲:
- Gimme Shelter
- Love in Vain
- Live with Me
- Midnight Rambler
- Monkey Man
- You Can't Always Get What You Want
おわりに
1962年に結成され、わずか8年足らずの間に8枚のアルバムをリリース。メンバーの入れ替えや死を経験し、それでもストーンズは音楽的に全盛期を迎えたまま70年代を迎えていきます。
ハード・ロックにグラム・ロック、さらにはパンクなどのジャンルが誕生していく1970年代に彼らはどのように変化していくのでしょうか。この続きはまた後日。結構後になりそうですが…。
アルバム未収録曲のプレイリスト収録曲:
- Let's Spend the Night Together
- Heart of Stone
- Paint It Black
- Jumpin' Jack Flash
以下に参考にしたネットでの記事リンクや書籍を貼っておきます。ぜひ、ストーンズをより深く知る一助にしてください。
記事リンク:
- ローリング・ストーンズの歴代アルバムをランク付け
- サイケに挑んだストーンズの『Their Satanic Majesties Request』
- STORIESローリング・ストーンズ『Beggars Banquet』“イギリスで最も破壊的で人騒がせな奴ら”と評された名作
- 70年代ストーンズを予感させるアメリカーナ的スタンスの傑作が『ベガーズ・バンケット』だ
- 新春にガツンと「レット・イット・ブリード」
- ザ・ローリング・ストーンズ「She’s A Rainbow」:サイケ期に生まれた名曲誕生の舞台裏
書籍: