UKロック。僕にとっての入り口は00年代を代表するバンドことアークティック・モンキーズ(Arctic Monkeys)でしたが、やはり始まりはザ・ビートルズ(The Beatles)(以下ビートルズ)でしょうということで。今回はビートルズのざっくり解説です。
どういう軌跡で、どんな音楽遍歴を辿り、後世に語り継がれることになったか、ざっくりと見ていきましょう。
- ビートルズの軌跡
- ビートルズのアルバムざっくり解説
- 1st〜5thまで
- 6th. ラバー・ソウル(Rubber Soul)
- 7th. リボルバー(Revolver)
- 8th. サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)
- 9th. マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)
- 10th. ホワイト・アルバム(The Beatles)
- 11th. イエロー・サブマリン(Yellow Submarine)
- 12th. アビー・ロード(Abbey Road)
- 13th. レット・イット・ビー(Let It Be)
- おわりに
ビートルズの軌跡
まずはこちらのプレイリストを。ぜひ流しながら読んでいただければ。
ビートルズとは

左からジョージ、ポール、リンゴ、ジョン
ビートルズは1960年にイギリスのリヴァプール(イングランド北西部)で結成されました。前身バンド「クオリーメン」も含め、多少のメンバーの増減はありますが、基本的にビートルズといえば
- ジョン・レノン(John Lennon) / Vo,Gt
- ポール・マッカートニー(Paul McCartney) / Vo,Ba
- ジョージ・ハリスン(George Harrison) / Gt, Vo
- リンゴ・スター(Ringo Starr) / Dr, Vo
の4人を指します。リンゴ・スターだけは芸名で、本名はリチャード・スターキー。指輪(リング)が好きだったことから「リングス」と呼ばれ、なんやかんやあってリンゴ・スターに落ち着きました。日本語で「リンゴ」が由来ではないんですね。
また、ビートルズと名乗るまでにジョニー&ザ・ムーンドッグス、ロング・ジョン&シルヴァー・ビートルズ、シルヴァー・ビートルズなど改名(?)を続けています。ライブ出演のためだったりレコード会社からの難色だったり、色々苦労したみたいですね。
ビートルズが公式に収録した楽曲は213曲で、その内144曲が「レノン=マッカートニー」名義となっています。2人がボーカルを担当するのはもちろん、ジョージとリンゴもメインボーカルを担当することもあります。この辺りはWikipediaを見つつ聴き比べると分かりやすいかと思いますので、ぜひそちらをご覧ください。
アルバム解説で紹介している13枚のアルバムに加え、コンピレーション・アルバムである「Past Masters vol.1, vol.2」の計15枚で213全てを聴くことが可能です。
バンド名の由来
- バディ・ホリーのバンド「バディ・ホリー&ザ・クリケッツ」のクリケッツ(コオロギ)という虫の名称にあやかって
- バイクを乗り回している女性を指すスラング(ビートルズ(Beetles))
- 音楽用語のビート(Beat)
を併せたもの。また、"Les Beat"と入れ替えるとフランス語っぽくなって格好良いから、とはジョンの談。
ビートルズが受けた音楽的影響
1960年以前の音楽といえば、アメリカのジャズ、ソウル、ブルースが主流でした。そこにチャック・ベリー(Chuck Berry)やリトル・リチャーズ(Little Richard)、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)などによってロックンロールが発明され、ダイナミックでダンサブルな要素によってクラブで流行り始めました。
ビートルズもロックンロール・スターな彼らに惹かれてバンドを始めるのですが、それ以外のジャンルにも大きく影響を受けています。
- ロニー・ドネガン(Lonnie Donegan)(スキッフル(ロックの前身的ジャンル))
- ファッツ・ドミノ(Fats Domino)(ロックンロール / R&B)
- カール・パーキンス(Carl Perkins)(ロカビリー)
- ジェリー・リー・ルイス(Jerry Lee Lewis)(ロカビリー)
- ジーン・ヴィンセント(Gene Vincent)(ロカビリー)
ロックンロールを中心としながら、ロカビリーやR&B、ソウル・ミュージックなども柔軟に吸収したからこそ、初期の爆発的な人気、中期以降の創造性に飛んだ音楽へ発展したのだと考えられます。
ちなみに「ハード・デイズ・ナイト」や「ヘルプ!」などの映画用サウンドトラック・アルバムや中期以降のクラシック・オーケストラ要素に関しては、プロデューサーのジョージ・マーティン(George Martin)の功績であるとされ、録音技術巧者でもあった彼がいなければ、中期以降のビートルズはあそこまでの名作を作れなかったのではないか、とも言われています。
ジョージ・マーティンはラスト・アルバム「Let It Be」以外全てのアルバムのプロデュースを担当しています。「Let It Be」は「ウォール・オブ・サウンド」で知られるフィル・スペクター(Phil Spector)がプロデュース。
ビートルズの活動の軌跡
1960年結成〜1970年4月までの11年で、計13枚のオリジナル・アルバムをリリース。「マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)」はダブルEPということで、アルバムと認識しないこともあるようですが、本記事ではアルバムとしてカウントしています。
初期ビートルズ

一般的に初期と言われている、5thアルバム「ヘルプ!(Help!)」までの活動をザックリと。ちなみにこの時点でシングル含めてほぼ全て全英1位となっています。っていうかアルバムは全て1位、シングルは1stアルバム収録曲以外全て1位ですね…。
- 1957年:ビートルズの前身バンドとして、ジョンが「クオリーメン」を結成
- 1961年:リヴァプールのレコード店「NEMS」を営んでいたブライアン・エプスタインがマネージャーになる
- 1962年8月:数多のバンド名・メンバー変更を経て、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴで(ほぼ)固定メンバーのビートルズ完成
- 1963年4月26日:1stアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー(Please Please Me)」リリース
- 1963年11月22日:セカンド・アルバム「ウィズ・ザ・ビートルズ(With The Beatles)」リリース。その頃ファンは「ビートルマニア」と呼称されるようになる
- 1964年:世界的に知名度・人気を獲得
- 1964年7月6日:主演映画・3rdアルバム「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!(A Hard Day's Night)」(アルバムは7月10日リリース)
- 1964年12月4日:4thアルバム「ビートルズ・フォー・セール(Beatles for Sale))」リリース
- 1965年7月29日:映画「ヘルプ!4人はアイドル」。
- 1965年8月6日:5thアルバム「ヘルプ!(Help!)」リリース
1stアルバムリリース以後、引くほど多忙ですね~。主演映画2作に5枚のオリジナル・アルバムが、たった2年半以内に収まってしまっている辺り、どれほど凄まじい人気だったかが伺えます…。
中期ビートルズ

傑作が生まれた、一般的に知られているビートルズはここからです。それまでもシングル曲等で有名なものもいくつかありますが、やはりビートルズといえば6thアルバムからがとんでもないのです。
- 1965年10月26日:イギリスの勲章M.B.Eを叙勲(全員)
- 1965年12月3日:6thアルバム「ラバー・ソウル(Rubber Soul)」リリース
- 1966年8月5日:7thアルバム「リボルバー(Revolver)」リリース
- 1965年8月27日:ビートルズ憧れのエルヴィス・プレスリーと面会。プレスリーが「君たちのアルバム、全て持っているよ」と言ったのに対し、ジョンが「僕は持ってないけどね」と余計なことを言い、険悪になる。ジョンは後悔した
- 1966年8月29日:過酷なスケジュール、ライブ会場の劣悪な音響などにより、ライブ活動をやめる
- 1966年11月:ジョン、オノ・ヨーコと出会う
- 1967年6月1日:8thアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)」リリース。「架空の人物サージェント・ペパーズとその仲間の物語」という名目のコンセプト・アルバム
- 1968年:マネージャーのブライアン・エプスタインの死により、ビートルズによりアップル・コア(Apple Corps Ltd.)が設立された
- 1967年12月26日:テレビ映画「マジカル・ミステリー・ツアー( Magical Mystery Tour)」公開。めちゃくちゃ滑る
- 1967年12月8日:9thアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」リリース。映画と違い、音楽は素晴らしかった
後期ビートルズ

まだまだ傑作は生まれます。この辺りから関係性の悪化が表面化し、バンドとして手が付けられない状態になっていくんですよね…。しかしそれでも音楽は素晴らしい。
- 1968年11月22日:10thアルバム「ザ・ビートルズ(The Beatles)」リリース。通称「ホワイト・アルバム」。2枚組
- 1969年1月17日:11thアルバム「イエロー・サブマリン(Yellow Submarine)」リリース。アニメ映画「イエロー・サブマリン」のサウンドトラック
- 1969年9月26日:12thアルバム「アビイ・ロード(Abbey Road)」リリース
- 1970年5月8日:13thアルバム「レット・イット・ビー(Let It Be)」リリース。これが最後にリリースされたオリジナル・アルバムとなる
- 1971年3月12日:ビートルズ、正式に解散
バンドとしては非常に珍しく、法的に解散が決まったバンドなんですよね。設立したアップル・コア社での権利問題とか金銭問題とかのいざこざが主な原因なようですが、バンドとしては既に機能していなかったため、実質的な解散は1970年には確定していたようです。
解散以後も各々ソロで活動を始めるのですが、その辺はまた個別で記事にしようと思います。流石に長すぎるので…。
ビートルズのアルバムざっくり解説
1st〜5thまで
ビートルズの歴史は長く、デビュー当初から人気はものすごいものがありました。その中で音楽的に大きく飛躍したのはやはり6thアルバム「ラバーソウル」以降でしょう。というわけで、〜5thアルバムまでは簡単に。
1st. プリーズ・プリーズ・ミー(Please Please Me)
アメリカのブルース、ロックンロールそしてR&Bからの影響を受け、それらを反映した、ビートルズの記念すべき1stアルバム。リリースは1963年3月22日。
全14曲(8曲オリジナル・6曲カバー)で、すでにビートルズっぽさを感じ取れます。流石に古いアルバムなので、個人的には滅多に聴きません。が、初の全英No.1に輝いた7曲目の"Please Please Me"やシングル・カットされた8曲目"Love Me Do"はやはり伊達じゃありません。
アルバムも全英1位を獲得したのですが、順位が下がる理由となったのが2ndアルバムがリリースされたから。というのが恐ろしいところ。この頃からすでにビートルズは最強だったというわけです。
プレイリスト収録曲:
- I Saw Her Standing There
- Please Please Me
- Do You Want to Know a Secret
2nd. ウィズ・ザ・ビートルズ(With The Beatles)
音楽性としては1stと大差ありません。なぜなら1963年11月22日にリリースされたのだから。そう、アルバムリリースのスパンがたった8ヶ月しかないのです。昔のバンドは今では考えられないくらい多作というか、商業性の強いものだったのでしょう。
オリジナル8曲、カバー6曲の計14曲。
プレイリスト収録曲:
- All My Loving
- Don't Bother Me
- Please Mr. Postman
3rd. ア・ハード・デイズ・ナイト(A Hard Day's Night)
1964年に公開されたビートルズ初の主演映画「ハード・デイズ・ナイト(ビートルズがやってくる ヤァ ヤァ ヤァ)」のサウンドトラック・アルバムにして3枚目のオリジナル・アルバムが「ア・ハード・デイズ・ナイト」。1964年7月10日リリース。
初期のビートルズを聴くならまずこれをおすすめします。1曲目から有名な曲ですし、なんたって今作は初の完全オリジナル作のみのアルバムですから。
表題曲"ハード・デイズ・ナイト(A Hard Day's Night)"に"キャント・バイ・ミー・ラヴ(Can't Buy Me Love)"に"ウェン・アイ・ゲット・ホーム(When I Get Home)"など、素晴らしい曲が多数収録。間違いなく初期ビートルズの最高傑作でしょう。
アルバム名の由来はリンゴ・スターが"It was a hard day…(…今は夜か)…'s night."と言ったことから。映画の撮影も過酷そのものだったことがよく表れています。
プレイリスト収録曲:
- A Hard Day's Night
- And I Love Her
- Can't Buy Me Love
- When I Get Home
4th. ビートルズ・フォー・セール(Beatles for Sale)
1964年12月4日リリースの4thアルバム「ビートルズ・フォー・セール」。全14曲で内8曲がオリジナル、6曲がカバー楽曲。
クリスマス・セールに合わせてリリースしたとのことで、割と突貫工事的なスケジュールでのレコーディングだったそうです。
曲自体は良いのですが、アルバムとして見ると優先順位としては低めになるのかな、という印象ではあります。ただ、62年からアメリカでフォーク・ミュージックが流行り始めたこともあり、フォーク・ロック的サウンドが散りばめられていて、今後のビートルズの音楽性のことを考えると一度は聴いておくべきアルバムでもあります。ボブ・ディランと交友関係になったのもちょうどこの頃のようですしね。
プレイリスト収録曲:
- No Reply
- Eight Days a Week
- I Don't Want to Spoil the Party
5th. ヘルプ!(Help!)
ビートルズ2作目の主演映画「ヘルプ!4人はアイドル」のサウンドトラック・アルバム「ヘルプ!」。1965年8月6日リリース。
これまでのアルバムの中にもビートルズの代表曲はありますが、やはり"ヘルプ!(Help!)"は大きいですよね。一度も聴いたことないなんて人は少ないのではないでしょうか。ロックンロールやフォーク・ロックを土台としつつ、木管楽器やタンバリンなどオーケストラ要素を採用していて、割と華やかなアルバムです。映画用のアルバムだからですかね。
プレイリスト収録曲:
- Help!
- You're Going to Lose That Girl
- Ticket to Ride
- Yesterday
6th. ラバー・ソウル(Rubber Soul)
ビートルズの本番といえばここから。1965年12月3日にリリースされた6thアルバム「ラバーソウル(Rubber Soul)」からです。ちなみに一般的には5thまでを初期、ここから9thアルバム「マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)」までが中期、以降が後期ビートルズとされています。
4thアルバム「フォー・セール」でフォーク・ロックを展開していたビートルズでしたが、ここに来てその成果が出たというか。バーズやボブ・ディランなど、当時のフォーク・スターたちからの影響を自分たちなりの音として昇華しています。これまでのアルバムと比べても明らかに実験的で、シタールなどインドの楽器を取り入れだしたのもここから。
歌詞が大きく変わったのもこの頃からで、これもやはりボブ・ディランからの影響が大きいようです。これまでの大衆性を意識したラブソングだけでなく、内面をさらけ出した、内省的で文学的なものと変容していきました。
これまでのブルース、ロックンロール、R&B、カントリーなど既存の音楽に加え、最新トレンドだったフォーク・ロックにドラッグカルチャーによるサイケデリックな雰囲気も合わさったおかげで、この時代ならではの完成された音像となっています。これらは次作「リボルバー」にて完成を迎えるのですが、今作の過渡期ならではの絶妙なバランスもまたたまらないものがありますね。
現在のUKロック・ミュージシャンたちの音楽も、明らかにこの辺りの年代から始まったな〜と感じることもあるくらい、後世への影響色濃い名盤です。UKロックとしては超重要作品であり、これから先のビートルズのアルバムが全部そうっていうレベルです。いかにビートルズが偉大か、改めて実感します。。。
プレイリスト収録曲:
- Drive My Car
- Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
- The Word
- In My Life
- If I Needed Someone
7th. リボルバー(Revolver)
個人的に一番好きなのが、7thアルバムのこちら「リボルバー(Revolver)」です。1966年8月5日リリース。
1960年代の中頃はヒッピー文化最盛期で、ビートルズも傾向していました。サイケデリックでドラッギーな雰囲気がめちゃくちゃに表れていて、今作はまさに「聴くドラッグ」と言えるようなアルバムになっています。
ちなみにヒッピーとは、簡単に言うと「愛と平和最高!自然と一体になってドラッグをキメながら自由に生きようよ」という考え方のこと。ニューヨークとサンフランシスコから全国的に発展したそうです。このヒッピー文化のおかげでサイケデリック・ミュージックというジャンルが誕生し、ビートルズらによってUKロックに持ち込まれることになるのですが、個人的にはこれがUKロック史として一番大きな出来事だと考えています。
事実、それ以降のUKロックアーティストたちはサイケデリックが基礎に備わっているバンドが多数存在していますからね。そういう意味で最も馴染み深いジャンルでありアルバムが今作「リボルバー」なわけです。
音楽的にも非常に素晴らしく、録音手法の多様化や環境音の取り入れ、前作で初登場したシタールなどの増加、オーケストラバンドの積極採用など、ライブを想定せず、レコーディング・アルバムとしてやっていこうという気概を強く感じます。
僕は1990年代、ブリットポップ期のUKロックが大好きなのですが、"For No One"なんかはBlur辺りがモロに影響を受けていそうですよね。改めて、やっぱり一番好きなアルバムです。
プレイリスト収録曲:
- Eleanor Rigby
- She Said She Said
- And Your Bird Can Sing
- For No One
- Got to Get You into My Life
- Tomorrow Never Knows
8th. サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)
コンセプト・アルバム最初期の、ロックにおける超重要作がこちら「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)」。リリースは1967年6月1日。
今作はポールが「架空のバンドのショー」という設定を思い付き、その設定を土台に制作されたアルバムとなっています。ヒッピーたちは「サマー・オブ・ラブ(Summer of Love)」というムーブメントとして扱われ、そのサウンドトラック的存在だとして「サージェント・ペッパー〜」は愛されるようになりました。
ザ・ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)(というかそのメンバーの一人ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson))が「ラバー・ソウル」に影響されて「ペット・サウンズ(Pet Sounds)」という大名作を生み出したのですが、その「ペット・サウンズ」に触発されて制作されたのが今作。とんでもない時代です。
リボルバーからロック要素を削ぎ落とし、ミュージカルやオーケストラなど、プログレッシブ的な展開をドラッギーでサイケな楽曲で展開している、というのがアルバムとしての全体像なのかな、と思いつつ、だからこそ個人的にはそこまで思い入れができないアルバムなのではないかと思っています。
作品自体はやはり素晴らしく、時代的にも愛され、ロックとしても非常に重要なものであることは間違いありません。
プレイリスト収録曲:
- With a Little Help from My Friends
- Lucy in the Sky with Diamonds
- Getting Better
- Lovely Rita
- Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)
9th. マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)
イギリスでは2枚組EPとしてリリースされた、テレビ映画「マジカル・ミステリー・ツアー」用のサウンドトラック・アルバム「マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)」。1967年12月8日リリース。
マネージャーであるブライアン・エプスタインが死去し、彼の「待った」なし、プロの映画監督を雇わないという無謀な状況下で映画の制作が行われ、大方の予想通り大スベりした映画でした。
しかし、アルバムの出来は非常に良く、中期ビートルズの中では最も取っ付きやすいポップなアルバムになっています。というか、全期間含めてもビートルズ入門アルバムとして向いているかもしれません。
映画業界からも愛され続けているのか、「あの頃ペニーレインと(Almost Famous)」ではヒロイン役の名前がペニー・レインでしたし、映画「ソーシャル・ネットワーク」のエンディング曲は「ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン(Baby, You're a Rich Man)」、映画「ラブ・アクチュアリー(Love Actually)」では結婚式のフラッシュモブの楽曲として使用されていました。
プレイリスト収録曲:
- Magical Mystery Tour
- Flying
- Strawberry Fields Forever
- Baby, You're a Rich Man
- All You Need Is Love
10th. ホワイト・アルバム(The Beatles)
原題「ザ・ビートルズ(The Beatles)」、真っ白なジャケから「ホワイト・アルバム(White Album)」と呼ばれている(そっちの方が慣れ親しまれている)10thアルバムです。1968年11月22日リリース。
自ら設立したレーベル、アップル・レコードから初のビートルズのアルバムであり、ビートルズ初の2枚組アルバムであり、30曲93分33秒という長尺。初尽くしにして規格外な収録曲。ホワイト・アルバムを初めて聴く人は「なんだこれ」となること請け合いです。僕も未だによく分からないな、と感じる瞬間があります。
一言で言うと「ごった煮」アルバムで、「全ての音楽ジャンルがこの1枚に詰め込まれている」とすら言われるほど。中期ビートルズにあったコンセプチュアルさはなく、創造的自由さに溢れたような作品になっています。
ただ、その中でもやはり際立っているのが"Helter Skelter"や"Yer Blues"などのハード・ロック的サウンドではないでしょうか。ハード・ロックはブルースの延長線上にあるジャンルですし、翌年にはレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)が1stアルバムをリリースしてますし、この頃のトレンドとしてアツいジャンルだったんでしょうね。
個人的にこのアルバムのハイライトは"クライ・ベイビー・クライ(Cry Baby Cry)"なのですが、ホワイト・アルバムは割とこういったバラード曲も聴き応えがあり、本当にアルバムとしてバラバラなんですよね。それでも芯の部分はしっかりビートルズで、思ったよりシンプルに「バンドしている」印象。
なんにせよ、長尺なだけあって取っ付きにくいアルバムであるのは間違いないかと思います。ある程度ビートルズを理解してから聴くのが吉かと。
プレイリスト収録曲:
- While My Guitar Gently Weeps
- Martha My Dear
- Everybody's Got Something to Hide Except Me and My Monkey
- Helter Skelter
- Cry Baby Cry
11th. イエロー・サブマリン(Yellow Submarine)
1969年1月13日にリリースされた、11thアルバムにしてアニメ映画「イエロー・サブマリン」のサウンドトラック・アルバム「イエロー・サブマリン(Yellow Submarine)」。
契約上仕方なく制作しなくてはいけないアルバムだったようで、メンバーにやる気はなく、収録曲の半分はジョージ・マーティン作のオーケストラ楽曲でお茶を濁しています。しかもビートルズとしての新曲はわずか4曲。「だったらホワイト・アルバムから分けてくれよ」と会社の方々は間違いなく思ったでしょうね…。
アルバムとしてカウントしてはいますが、実質的に「無視しても大丈夫」な唯一のビートルズのアルバムといえるでしょう。事実、話題に挙がることはほぼない作品ですし、ビートルズ唯一の「No.1になったことがないアルバム」ですから。
12th. アビー・ロード(Abbey Road)
1969年9月26日リリース。作品としては先にリリースされましたが、制作の順番としては今作「アビー・ロード(Abbey Road)」がビートルズとして最後にレコーディングした作品になっています。また、今作からモノラル盤がなくなり、完全にステレオ盤に移行したようです。録音環境も進化したんですねぇ。
「もう解散は目に見えてるし、最後に最高傑作作ろうぜ!」という気合で制作されたアルバムだけあって、アルバムトータルの完成度としては破格の出来。隙のなさは歴代随一なのではないでしょうか。
"Maxwell's Silver Hammer"や"Because"辺りに顕著なように、moog(モーグ)のシンセサイザーがめちゃくちゃに素晴らしい音ですよね。
今作はもう完成された「ビートルズ」であるため、逆にもはや言うことはありません。ただ素晴らしいの一言です。
「ビートルズで3枚だけ選べ」と言われたら僕は
- リボルバー(Revolver)
- アビー・ロード(Abbey Road)
- マジカル・ミステリー・ツアー(Magical Mystery Tour)
を選びます。次点で「ラバー・ソウル(Rubber Soul)」と「ホワイト・アルバム(The Beatles)」ですかね。あくまで個人的な好みに起因しますので、あしからず。
プレイリスト収録曲:
- Come Together
- Something
- You Never Give Me Your Money
- Sun King
13th. レット・イット・ビー(Let It Be)
13枚目にして最後のアルバム「レット・イット・ビー(Let It Be)」。1970年5月8日リリース。
「レット・イット・ビー」は元々「ゲット・バック・セッション(Get Back Session)」という名目でレコーディングされた楽曲が素材になっています。「ゲット・バック・セッション」は前作「アビー・ロード」より以前に行われたものなので、レコーディングの時期的には「レット・イット・ビー」の方が先となっているんですね。
メンバー間の軋轢がアルバム制作に歯止めをかけることになり、結局1年ほどお蔵入りになっていました。その間、エンジニアのグリン・ジョンズが試行錯誤し続け、何度かアルバムとしてリリースするチャンスがあったようですが、それも結局お蔵入りに。
そんなこんなしているうちに、アメリカの超有名プロデューサーであるフィル・スペクター(Phil Spector)がアルバム・プロデュースをすることになり、今の「レット・イット・ビー」が完成しました。
フィル・スペクターといえば「ウォール・オブ・サウンド」という録音手法で有名な方です。ウォール・オブ・サウンドは「多重録音して音圧を上げる手法」とよく言われますが、実際は「同じ楽器を同時に鳴らして音圧を上げる」という手法です。とにかく音圧を上げる匠のような人ということですね。今作に関しては、前者の手法が使われたと考えられます。1年も前のセッションですしね。
「ゲット・バック・セッション」はその名の通り、原点回帰を目的としたセッションでした。初期ビートルズ(Not多重録音)に近い雰囲気を想定してレコーディングされた楽曲たちだったのですが、ウォール・オブ・サウンドの匠であるフィル・スペクターがプロデュース(Yes多重録音)したことにより、当初のコンセプトとは180°反対の方向へと舵切りしてしまったのです。
ジョンとジョージは満足いく結果だったようですが、ポールは不満タラタラだったようです。しかし契約上の理由から差し止めることもできず、そのままリリースされたとのことですね。
個人的には、メンバーのGOサインがちゃんと出ていないのにリリースされたアルバムというのがどうしてもダメで、今作もそういった理由から興味は薄めです。「アビー・ロード」とそう変わらない時期に録音されたので、楽曲の完成度は素晴らしいと思うんですけどね…。
プレイリスト収録曲:
- Across the Universe
- Let It Be
- The Long and Winding Road
おわりに
ざっくりとですが、ビートルズの歴史としてはある程度網羅できたのではないでしょうか。もちろん、更に深く学ぼうと思えばいくらでも深くはいけるんですけどね。ビートルズ研究家なんていう専門職もあるくらいに奥深いので、そこから先に行くかどうかはお任せします。
僕も初めてビートルズについてちゃんと調べたので、ここ最近は一番ビートルズを聴き込んだ時期になりました。そのおかげか、これを書く前よりも多角的にビートルズの音を捉えられるようになったように感じられ、普通に前よりも好きになりました。
以下に参考にしたネットでの記事リンクや書籍を貼っておきます。ぜひ、ビートルズをより知る一助にしてください。
記事リンク:
- ビートルズ伝説の幕開け、『プリーズ・プリーズ・ミー』完成までの物語
- 『Sgt Pepper’s』が後世に与えた影響
- ザ・ビートルズ”The White Album”の制作秘話と9つの楽曲エピソード
- 「ホワイト・アルバム」は、どうして特別なのか
- ビートルズ『Let It Be』はどうやってできたのか:ゲット・バック・セッションと屋上ライヴ、そして最後の作品へ
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