アルバム紹介

Nicki Nicole – 『Parte de Mí』

大体年に一人くらいのペースで英語圏以外のアーティストにハマりがちなのですが、今年のその枠はNicki Nicole(ニッキー・ニコール。正式にはニッキ・ニコルが正しいと思われる。)というアルゼンチンのシンガー・ラッパーが収まることになりました。

今年の個人的ベスト・アルバムは3位内にランクインさせたアーティストはちゃんと調べた上で書こう、という決意の元書いたのですが、何かニッキーだけ2記事になってました。今年はUK DrillとARG Latin Trap(アルゼンチン・ラテン・トラップ)にまんまとハマってしまったってわけです。

ここ最近のアルゼンチンで起こっているラテン・トラップ・ムーブメントについて2021年にアルゼンチンのラテン・トラップにハマりました。2022年は過去作もディグりつつ、プエルト・リコの方も攻めていきたい所存。...

まあつまるところ、"調べたり書いたりしたくなるアーティストは絶対に3位以内に収めよう"というあからさまな目論見があったわけです。調べた方が明らかに解像度が上がりますし、人となりを知ることで愛着も湧きますし。

というわけでこの記事はアルゼンチンのシンガー・ラッパーNicki Nicole(ニッキー・ニコール。以下ニッキー)のこれまでの簡単な軌跡と2021年リリースの2nd AL『Parte de Mí』とそれに伴う色々について書いていきます。

ニッキー・ニコールのこれまで

アルゼンチンのサンタフェ州、ロサリオとはチェ・ゲバラが生まれた場所というのがコモンセンスですが、ニッキーはまさにそこで生まれました。工業地区であり、アルゼンチンの中では3番目に人口の多い都市だそうです。

音楽を始めたのは2015年の頃とのことなので、2000年生まれのニッキーは14~15歳からキャリアをスタートさせたということになります。

US Hip Hopを聴いたり地元のラップバトルを観に行ったりなど、当初からラップ音楽へ関心を示していましたが、そもそもの音楽が好きになったきっかけはMTVで観たマイケル・ジャクソンやマドンナなどのポップス、R&Bだったのだとか。スペイン語が母国語なので、スペインのバンドやアーティストも日常的に聴いていたそうですが。

そんなわけで音楽を始めて段々とステージに上がることに興味が向かうようになった17歳頃のニッキー。フリースタイル・ラップバトルに出演するようになります。動画は残っていないようで、バトルの成績自体はそこまでのものではないかと判断したので割愛。

日本でもラップバトルは親しまれていて、未だにYouTubeにバトル動画がアップされていますが、アルゼンチンも同じ感じなんですかね。地元の大会に出演することで知名度や舞台度胸を獲得していったのでしょう。

"Wapo Traketero"と"Music Session #13"

18歳になると、いよいよ楽曲を世にリリースすることに。2019年4月26日のことですが、一発目から特大ヒットを飛ばすことになります。

"Wapo Traketero"は2021年12月6日時点で1.1億回再生という驚異的な数字を叩き出しています。これはラッパーDuki(2016年ラップバトル『El Quinto Escalón』優勝者。かっこ良い)がインスタグラムのストーリーズで取り上げたことがきっかけで爆発的に広まることになったみたいですね。

そんなDukiとは今ではDale Play Recordsというレーベルの仲間。一緒に楽曲を制作する仲になっています。

同年8月。プロデューサーBizarrapの『Music Session #13』でのコラボでアルゼンチンのホット・チャート100で3位を記録。

2019年にキャリアをスタートさせた初期から現在まで、BizarrapはNickiの音楽にとってなくてはならない存在となっています。忌憚のない意見のやり取りができる兄妹のような関係なのだとか。2nd AL『Parte de Mí』でも6, 8, 11, 15, 16の計5曲でフィーチャリングやプロデュースで関わるなど、実力と信頼の関係を保っています。

アメリカ進出

1曲目のリリースから大成功を果たし、1stアルバムもSpotiyにてほとんどが1,000万回再生(2021年12月6日時点)を超えて聴かれているニッキーは、今年2021年についにアメリカ進出を果たします。

2021年4月28日に『The Tonight Show Starring Jimmy Fallon』へ出演。代表曲の"Wapo Traketero"とアルバム未収録の"No Toque Mi Naik"を披露します。

NPR Musicはヒスパニック文化遺産月間(Hispanic Heritage Month)を記念し、"El Tiny(エル・タイニー)"というラテン系のミュージシャンが出演するコンサート・シリーズを開催。

J Balvinから始まりSechやCamila Cabelloらが出演したこのシリーズにニッキーが選出されました。現在本シリーズ内で最も視聴再生されています(539万回再生)。

アルバムも良いですが、個人的に本格的に好きになったのがこのライブ映像だったので、これはぜひとも観ていただきたいところ。こちらは10月13日に公開。

極め付けはChristina Aguilera(クリスティーナ・アギレラ)とBecky G(ベッキーG)とのコラボ楽曲"Pa Mis Muchachas"(10月22日リリース)。

曲自体はスペイン語のラテン・トラップですが、やはりクリスティーナ・アギレラのネームバリューは大きく、MVのコメントも英語のものが以前より明らかに目に入るようになりました。

Nicki Nicole - Parte de Mí

というわけで本題。2nd AL『Parte de Mí』について。

15曲中なんと9曲がシングル・カットされるという圧倒的ポップス・アルバム的ムーブは伊達ではなく、ラテン・トラップでありながらポップス・アルバムとしての高い完成度を誇ります。まあ実際のところラテン・ポップスやR&Bっての方が近いんですけどね。

タイトル『Parte de Mí(Part of Me)』とあるように、アルバム・ジャケットは"パズル"をモチーフとしたアートワークになっています。『人間自身を表現していて、私たちが断片や切り口、パーツの総体であることを示しているの。』とのこと。前作のタイトル『Recuerdos』は"思い出"という意味ですし、その人のある一面でなく、多面的に人を見ようとするような人となりが感じられます。楽曲をそれぞれ見ていきましょう。

ニッキーのポップ・センスを証明するのが"'Baby"であるのは間違いなく、ポップス的楽曲展開にラップと歌の見事すぎる融合のラテン・トラップ的歌唱は間違いなくこのアルバムのハイライト。

"Mala Vida"は映画『ゴッド・ファーザー』3部作をプロデューサーと共に3日かけて制覇し、イタリア文化と映画の雰囲気にインスパイアされたMVを制作。"映画の予告編のような"作品をイメージしたとのことで、かなりそれっぽく仕上がっています。Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)に似ているとよく言われるニッキーですが、このMVが一番そう見えるような気がします。

アルゼンチンのレゲエ・ミュージシャンDread Mar Iと盟友Bizarrapとのコラボ曲"Verte"。これとか分かりやすい例ですが、本作はラテン・トラップ周辺のジャンルが全体的に盛り込まれており、ラテン音楽の入門的なアルバムとしても楽しく聴けます。

"Me Has Dejado"は自分がニッキーを知るきっかけになった楽曲。アップされて数時間の割に20万回再生は超えてた記憶。ルックスが良いし、この勢いはただ事じゃないと、なんとなくアルゼンチンの音楽に興味を持つことになったのはここからでしたね。

"Sabe"や"Toa la Vida"ではレゲトンのリズムを取り入れていて、これぞラテンなビートを乗りこなします。レゲトンのビートって結構クドいですが、アルバム内に2曲とかだとむしろアクセントになって良いですね。

ちなみに11曲目で共演しているTruenoは現在の恋人で、彼の楽曲"Mamichula''でコラボしたことがきっかけとなり恋愛へと発展したようです。

Truenoはニッキーの2ndにも11曲目"Dangerous"にてBizarrapと共に共演。

ラテン・ポップ、ラテン・トラップらしく、レゲトンやトラップなどのジャンルを扱い、ギターでヨーロッパのテイストも取り入れていて完全"英語圏外"なサウンドですが、USのポップスにも通じる絶妙なポップスのセンスが光るアルバム。ニッキーは歌もラップもどちらも余裕で上手く、若い世代らしい歌唱を披露してくれます。個人的にもトレンドなジャンルだということを差し引いてもそりゃ人気出るわな、といった具合。

おわりに

Hip Hopにガッツリハマったのが今年下半期のこと。当初はUS Hip Hopから入ったはずが、今年が終わる頃にはUK Drillが大部分を占め、次いでアルゼンチンのラテン・トラップ。USラップは有名どこだけで十分かな、という感じに落ち着きました。

元来ミーハーなところがあり、"今流行っている"ものに弱いこともあるのである意味当然の結果なのかもしれませんが、今年は自分でも以前からもっと聴いてみたいジャンルを聴けたし、レゲトンみたいなあまり好んでいなかったはずのジャンルまで好きになれたので本当に良い年だったなと。

特に今回みたいにちゃんと調べるくらいに好きなアーティストが出てくるとより深く知る機会に繋がるのでありがたいですね。これをきっかけとして、アルゼンチンのシーンも来年はやれる範囲で追いかけていこうと思います。

では。

ここ最近のアルゼンチンで起こっているラテン・トラップ・ムーブメントについて2021年にアルゼンチンのラテン・トラップにハマりました。2022年は過去作もディグりつつ、プエルト・リコの方も攻めていきたい所存。...