ざっくり解説

カントリー・ミュージックとは。1960年代までのカントリーを中心に解説

Countryカントリー(正式名称:Country Musicカントリー音楽)は、Bluesブルースとアメリカ民族音楽をルーツとした音楽ジャンルで、発祥は1920年代初頭のアメリカ南部です。

バラードやダンスを含む民族の歌がカントリーであり、主な楽器は弦楽器(バンジョー、ギター、バイオリン)にハーモニカなどが使用されてきました。

1940年代に人気を博し、同様のルーツを持つHillbillyヒルビリーと並行して発展しました。2021年に入ってもよく聴かれる音楽ジャンルの一つであり、現代の代表的なカントリー・ミュージシャンとしてはKacey Musgravesケイシー・マスグレイブスMaren Morrisマーレン・モリスBrett Eldredgeブレット・エルドレッジらがいます。

カントリー・ミュージックとは

カントリーの起源

カントリー・ミュージックは、ケルト、メキシコ、ヨーロッパにアフリカなど、様々な国の人がアメリカ南部に奴隷として連れられ強制労働させられる中で、アメリカの伝統的な民族音楽に触発されたことがきっかけとなって生まれた音楽ジャンルです。基本的には、労働者階級のアメリカ人の民族音楽とブルースが中心となっています。ジャンルとしては1920年代初頭に確立し、それ以前はアメリカ南部および南西部の伝統的な音楽として認知されてきました。

カントリーに似たものとして、当時のアメリカ南東部では、「Appalachian Musicアパラチアン音楽」というものがあります。アフリカやヨーロッパから渡ってきた民族音楽や楽器がアパラチア山脈近辺で知れ渡ったことで発展した音楽です。また、アメリカの西部が開拓され、ルイジアナ州に定住したフランス系移民(ケイジャン)の音楽「Cajun Musicケイジャン音楽」も同様に発展していき、カントリーと結び付いていきました。

また、カントリーといえばテネシー州のナッシュビルやブリストルで知られていて、特にブリストルは1927年に「カントリーミュージック発祥の地」として米国議会より正式に認定されています。

カントリーの隆盛

1920~1930年代のカントリー

カントリー最初の世代は1920年代の人々と言えるでしょう。当時のカントリーはアトランタでも人気で、特にGid Tannerギッド・タナーおよび彼のバンドSkillet Lickersスキレット・リッカーズは、~1930年代にかけて最も知られるカントリー音楽家でした。

当時Gidとライバル関係にあったFiddlin' John Carsonフィドリン・ジョン・カールソン("Little Log Cabin in the Lane"はカントリー初のボーカル付き楽曲。1923年リリース)、Jimmie Rodgersジミー・ロジャースCarter Familyカーター・ファミリーらがこの頃のカントリー・スターとしてよく知られます。当時のカントリー、ヒルビリー音楽家たちの多くはブルースの楽曲を演奏・録音することが多かったようです。また、カントリー音楽として初めてのヒット作となったのは、Vernon Dalhartバーノン・ダルハートの"Wreck of the Old 97"(1924年作)です。

1930~40年代のカントリー

1930年代に入ると、ラジオが大衆の中で人気の娯楽となります。カントリーをフィーチャーしたチャンネル「Barn Dance Showバーン・ダンス・ショー」がアメリカ南部、シカゴやカリフォルニアで放送されたことで、世間一般にカントリーが認知されるようになりました。

「Barn Dance Show」は「Grand Ole Opryグランド・オール・オプリ」へ名称を変え、1925年からナッシュビルで放送されるようになりました。なんと未だに現役のチャンネルなのです。

女性のカントリー・ミュージシャンも活発で、Patsy Montanaパッツィー・モンタナによる"I Want to Be a Cowboy's Sweetheart"、Jenny Lou Carsonジェニー・ルー・カーソン作曲の"You Two-Timed Me One Time Too Often"などはカントリーの古典としてよく知られる楽曲となっています。Taylor Swiftテイラー・スウィフトがメディアから『America's Sweetheart』と呼ばれるのは、Patsy Montanaの楽曲の名残なのかなぁ、と(知らんけど)。

第二次世界大戦の影響を受け、ドイツやフランスなど世界各国から著名な映画人がアメリカに亡命したこともあって、1930年代~1940年代にハリウッドは黄金期を迎えます。ハリウッドの西部劇映画で「カウボーイ・ソング(西部劇音楽)」が使用されたこともまた、カントリー音楽が大衆に広まる要因の一つであったとされています。

当時の映画スターとして「歌うカウボーイの王様」Gene Autryジーン・オートリーがいます。彼はヒルビリー音楽のSSWでありながら映画にも多数出演。今でいうマルチ・タレントのような人は当時から存在していたんですね。彼の最大のヒット作はクリスマス・ソングとして知られる"Rudolph the Red-Nosed Reindeer"。楽曲自体はJohnny Marksジョニー・マークス(1909-1985)によるものです。

ウエスタン・スイングとブギー

カントリーの新たなサブ・ジャンル音楽として、1930~1940年代にはWestern Swingウエスタン・スイングBoogieブギーがあります。

どちらもJazzジャズからの影響色濃いジャンルで、Bob Wills & His Texas Playboysボブ・ウィルズ&ヒズ・テキサス・プレイボーイズのBob WillsがWestern Swingの生みの親とされています。Boogieは1910年代からジャズやブルース界隈で親しまれてきましたが、カントリーが取り入れたのは1939年の頃、Johnny Barfieldジョニー・バーフィールドが"Boogie Woogie"を録音したのが最初とされています。

Western Swingはカントリー版のBig Bandビッグ・バンドのようなもので、踊れる音楽として非常に人気でした。代表的なアーティストとしてCliff Brunerクリフ・ブルーナーMoon Mullicanムーン・マリカンMilton Brownミルトン・ブラウンAdolph Hofnerアドルフ・ホフナーらがいます。

BoogieはDelmore Brothersデルモア・ブラザーズの "Freight Train Boogie"が特に知られていて、ブルースやカントリーがロカビリーへ変化していく過程が捉えられています。他には1948年アーサー・スミス(Arthur "Guitar Boogie" Smith)の"Guitar Boogie"と"Banjo Boogie"などが有名です。

1950年代~1960年代のカントリー

第二次世界大戦末期の頃になると、弦楽器ばかりだったカントリー音楽にトランペット、キーボードやドラムなどが追加され、徐々にバンド編成へ発展していきます。ジャンルとしてはBill Monroeビル・モンローによるBluegrassブルーグラスがラジオを中心に知れ渡りました。

Bluegrassは1940年代からアパラチア地方で発展したジャンルです。ジャンル名はBill Monroeが結成したバンドBlue Grass Boysブルー・グラス・ボーイズに由来しています。音楽的なルーツは、イギリス、スコットランドやアイルランドの伝統的なバラードやダンス・チューン、アフリカ系アメリカ人のブルースやジャズにあり、楽器はフィドル、バンジョー、ギター、ベース、ハーモニカなどが一般的で、この辺りはフォークの編成によく似ていますね。

1950年代にはRockabillyロカビリーNashville Soundナッシュビル・サウンドといったジャンルやムーブメントが最盛を誇り、中でも1956年はRockabillyの年として設定されました。Johnny Cashジョニー・キャッシュがそのジャンルの代表的存在として知られます。

また、アメリカ南部のブルース、西部のSwingスウィングなどにルーツを持つ「Honky Tonkホンキー・トンク」というサブジャンルも生まれたのですが、これはElvis Presleyエルヴィス・プレスリーJerry Lee Lewisジェリー・リー・ルイスChuck Berryチャック・ベリーらに多大なる影響を与え、Rock ’n’ Rollロックンロールが誕生するきっかけにもなりました。特にHank Williamsハンク・ウィリアムズがHonky Tonkで知られていて、ロックンロール・アーティストたちの一番のインスピレーションとして君臨しました。

1960年代に入ると「British Invasionイギリスの侵略」というイギリスからのムーブメントによって、Rockロックが音楽のメインストリームになったことを受け、カントリー音楽はロックを積極的に取り入れたCountry Rockカントリー・ロックというサブ・ジャンルが誕生しました。

The Beatlesザ・ビートルズThe Rolling Stonesザ・ローリング・ストーンズBuffalo Springfieldバッファロー・スプリングフィールドらが1964年頃からカントリー音楽の楽曲やカバーを公開してきたこともあり、カントリーは徐々にCountry Rockへとその形を変え、それがアルバムという形として結実したのがBob Dylanボブ・ディランのアルバム『Blonde on Blondeブロンド・オン・ブロンド』(1966作)になります。

そこからCountry Rockは活発になり、The International Submarine Bandインターナショナル・サブマリン・バンドが1968年にリリースした『Safe at Homeセーフ・アット・ホーム』、The Byrdsザ・バーズの『Sweetheart of the Rodeoスウィート・ハート・オブ・ザ・ロデオ』、Flying Burrito Brothersフライング・ブリート・ブラザーズの『The Gilded Palace of Sinザ・ギルデッド・パレス・オブ・シン」』(1969年)などが発表され、発展していきました。

ちなみに、上記3作全ての中心人物としてGram Parsonsグラム・パーソンズという人物がいて、彼が「カントリー・ロックの父」といった存在として知られています。

それ以降

1970年以降は、FolkフォークSoft Rockソフト・ロックを取り入れたCountry Popカントリー・ポップが生まれたり、ジャンルの流れに沿うようにCountry Punkカントリー・パンクCountry Hip Hopカントリー・ヒップホップなどが誕生したりしつつ、カントリーは様々なジャンルを取り入れながら生き残り続けていきます。

今日ではKacey MusgravesやMaren Morris、Brett Eldredgeなどのカントリー・ミュージシャンがよく知られるところですし、2018年にはLil Nas Xリル・ナズ・エックスによる"Old Town Road"が世界的なヒットになりました。

カントリーとフォーク

出自は違えど、カントリーとフォークは音楽的に非常に似ています。この2つの大きな違いは、楽曲の持つメッセージ性にあるでしょう。フォークは主に政治的なメッセージを持つものとして発展していきました。

政治的メッセージのある楽曲は「Protest Songプロテスト・ソング」として18世紀から認知され、19世紀には奴隷制度や貧困などに対する抗議の手段として楽曲として使用されました。

20世紀になると、公民権運動、女性の権利、政治や戦争などについての歌詞が主流となり、公民権運動のプロテスト・ソングとしては特にBob Dylanの"Blowin' in the Wind"やPete Seegerピート・シーガーの"We Shall Overcome"などがよく知られています。

対してカントリーは保守的な聴衆が多く、白人向けの音楽として長年聴かれ続けてきました。家族や故郷の州、田舎の素朴さや暖かさなどについて歌ったものが多く、分かりやすく言うと「いつまでも地元に住み続ける元ヤンキーのようなもの」です。元々が開拓民の民謡だったことから、こういった歌詞が根付いたんでしょうね。

そんな保守的なカントリーですが、2013年より設立された「Black Lives Matterブラック・ライヴズ・マター」の影響もあって、段々と変化が見られるようになってきました。2020年にはDixie Chicksディクシー・チックスThe Chicksザ・チックスへと改名("Dixie"は奴隷制を認めていた米南部の愛称)。同時にプロテスト・ソング"March March"を発表。どのジャンルも変化はあるものですが、古くからあるカントリーでさえその限りではないのです。

カントリーからロカビリー。そしてその先へ

1940年代に起こったムーブメントのFolk Revivalフォーク・リバイバル以降、Burl Ivesバール・アイブスGordon Lightfootゴードン・ライトフットなど、一部のアーティストは1950年代に入るとカントリーへジャンル転向をしました。そして、彼らの演奏する楽曲は次第にRockabillyと呼ばれるようになっていきます。

後にロックンロールへと変貌を遂げる初期のRockabillyは、ブルースとカントリー音楽を組み合わせたような音楽でした。上述したHank Williamsを契機に、Elvis Presleyの"Heartbreak Hotel"、Johnny Cashの"I Walk the Line"などが脚光を浴び、Rockabillyからロックンロールへと進化していくのです。

おわりに

完全に個人的な感想なんですけど、カントリー音楽、年々好きになってるんですよね。昔は野暮ったくておっさん臭いな~なんて思っていたはずなんですけど。多分当時より洗練されているからっていうのもあると思うんですけど、やっぱり加齢に伴う経年変化のようなものでしょうか。何にせよ、好きになれることが増えるのは良いことですよね。これからもカントリーは追い続けていこうと思います。